可算と非可算の区別 (601)

サマセット・モームの A Man from Glasgow という短編小説を読んでいたら次のような一節があった。「私」は、スペインのある地方で宿屋に泊った。冬で寒い夜である。食堂に一人の男がいて、火鉢に当っている。火鉢は、スペイン語で brasero という真鍮の皿状の容器で、灰と熱した炭が入れてある。「私」が暖を取ろうと椅子を近づけると、その男は、自分の椅子を引こうとした。

“Don’t move,” I said. “There’s heaps of room for two.”
I lit a cigar and offered one to him. ...
“I don’t mid if I do,” he said, stretching out his hand.
「動かなくていい。二人で充分当れるよ」
私はそういった。葉巻に火をつけ、男にも吸うかい?というように示した。
「ありがとう」男は手を伸ばして受け取った。

1行目の room は「部屋」ではなく、「スペース、空間的ゆとり」という意味で、この意味では非可算名詞になる。だから、ここで
There’s a large room for two.
とはいえない。それなら、「二人用の大きい部屋」の意味になる。同じ作品から。

I opened a door by my side and went into a room. It was bare and white and there wasn’t a stick of furniture in it.
私は横にあるドアを開けて部屋に入った。それはがらんとした白い壁の部屋で家具は一つも無かった。

この場合の room は勿論「部屋」の意味で可算名詞であるからa が必須。furniture は「家具」の意味で、1個、2個と数えられそうな気がするが、非可算名詞である。
理屈でなく、一つ一つの単語の意味と可算・非可算の別を覚えて行く。というと大変そうだが、そもそも、単語は一つ一つ意味を覚えたのだから、そのついでにその用法も覚えなければならなかったのである。それを怠ったつけが今来ているのなら、なるべく早くそれを修正する。
といっても、それほどがっかりすることはない。我々にとって問題になるのは、30~40個位のすでにその意味は知っている単語であり、それをレヴューするだけである。

先日、ラジオの英語学習番組をそれとなく聞いていたら、視聴者が講師に、
「countable と uncountable の 違いを教えてください」と質問した。講師は「一つ一つの単語について、その用法を覚えて行くのがいい」という趣旨の答をしていた。僕も賛成である。
「原理を具体的な用法に適用する」方向を演繹的というなら、「個々の用法から原理を割り出す」のは帰納的である。両方必要で、演繹と帰納を繰り返すのが正しい語学の学習法である。

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