a standard motif (595)

Eメールによる、アメリカ人との将棋の対局で次のようなやりとりがあった。将棋の分る方は次の局面をイメージしてください。
先手の玉は4八にいる。飛車が6六にいる。後手の僕が8四に角を打った。この3枚の駒は斜めの一線上にある。いわゆる王手飛車である。ただ、7筋に先手7六歩、後手7四歩と歩が向かい合っている。先手は7五桂と打った。普通は同歩と取られてしまう無駄な手だが、その瞬間、角の利きが遮断されるので、飛車または玉を移動すると王手飛車が解消する。感心して、

This is a wonderful sacrifice, which only a strong player can play. Now you have got the upper hand.

とコメントをすると、

Thank you for the compliment but I'm hardly a strong player! This is a standard chess motif of sacrificing a minor piece to save a major piece.
(褒めていただいてありがとう。でも、私が強いなどとはとんでもない。この手は、大駒を救うために小駒を犠牲にする、チェスの標準的なモチーフです。)

と返してきた。
get the upper hand は「優勢になる」の意味のイディオム。
モチーフは本来音楽用語であるが、文芸作品や絵画、映画などについていう時は、「主題・テーマ」といった意味に用いられるようだ。例えば「この小説のモチーフは昭和の激動の時代を生き抜いた夫婦の愛である」「猫をモチーフにした短歌連作」などという。
相手に motif について In other words? と聞くと a recurring theme と答があった。チェスや将棋では、一定の戦略を持って指し手を進めて行くが、その部分部分で、自分を有利に導く目標がある。将棋でいえば「飛車先を突破する」「玉を固める」「入玉を図る」など。recurring は「繰りかえし起こる(一回きりのことではない)」、standard は「標準的な」。そのような目標・テーマが、ここにいうモチーフである。将棋用語の「手筋」に当たる場合もあるだろう。
ちなみに、モチーフは、英語 motif 「モウティーフ」、ドイツ語 motiv 「モティーフ」、フランス語 motif 「モティフ」で、辞書によれば、日本語にはフランス語から入った。

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