The Sign of Four (210)

Conan Doyle に The Sign of Four というシャーロック・ホームズ物がある。「四人の署名」という訳題だが、「署名」なら signature である。sign は「しるし、記号」という意味。動詞としては「署名する」という意味があるが、名詞では「署名」という意味は無い。作品を読むと、その形を

a curious hieroglyphic like four crosses in a line with their arms touching

と描写している。++++のような形で横棒がくっついているのだろう。全体で1個の記号。the sign of four は4という数概念を具象化した「しるし」「記号」という意味。
筋書きでは、秘密を共有している4人組がいる。その4人組が自分達のシンボルとして作り、自署的に使用したものとするならば「4人組の(共同)署名」と云えなくもないが、「署名が4個ある」(four signatures) のではない。
訳者(延原謙)の解説によると、原作の雑誌初出では、The Sign of the Four となっていたとのことである。それなら、ますます「4人組」だが、単行本で、定冠詞が無くなったという。「四人組」では、どうも即物的なので、抽象化してミステリアスにしたのかも知れない。翻訳のタイトルも、苦心のすえ「四つの署名」にしたものらしい。
それはそれとして、英語を勉強している人は、原題の英語が The Sign of the Four であっても、The Sign of Fourであっても、sign の部分は「署名」ではなく、「しるし、記号」の意味であることを正確に把握してほしい。一方、訳書だけを読む人も、作中、署名が4つ出てきたわけではないのに、なぜ「4つの署名」なのだろう、と疑問に思わないと推理小説ファンといえませんぞ。

この記事へのコメント

ぐうたらぅ
2010年09月06日 13:45
突然、お邪魔いたします。シャーロック・ホームズが好きで、拙ブログで似たようなことを「英語学習者」の観点で書きました。それから、こちらの記事を拝見しまして、こんなふうにすっきりと説明はできませんでしたが、一応疑問に思えたということは私も推理小説ファンとはいえるのかな、と少し安心しました。

以下、拙ブログの記事の一部ですが、もし興味を持っていただければ幸いです。
『四つの署名』―signはサインか?-(1)
http://ameblo.jp/guutarau06/entry-10257712224.html
『四つの署名』―signはサインか?-(5)
http://ameblo.jp/guutarau06/entry-10429189786.html

ところで、sign=「しるし、記号」というと、何となく英語学習者としては「抽象的で簡略化された、目に見える図形に限るのか?」というイメージを抱いてしまいますが、シャーロック・ホームズの小説中でのsignの使い方を見ると、例えば『四つの署名』で「侵入者」のsignは「足跡」だけだったとか、メアリーから「動揺」や「財宝に興味がなさそうな」signをワトソンが見てとった、というように、(私にはうまく説明できないのですが……)「直接的な言葉以外から導かれる、直接目には見えない結論」みたいなものを示している例があるように思いました。
タイトルの"The Sign of Four"を見ただけの段階で、英語話者には「しるし」や「記号」のことだとわかるものなのでしょうか?
2010年09月06日 15:21
ぐうたらぅさん、コメントをありがとうございました。私も、タイトル以外の部分での sign の使われかたには、あまり注意を払っていませんでした。ゆっくり考えさせてもらいます。ゆっくりというのは、今暑さでぐったりしていますので。
ぐうたらぅ
2010年09月06日 16:52
御返事ありがとうございます。あの、特に何か急いでいるというわけではありませんので気になさらないでください。
なかなかタイトルだと翻訳者の誤訳なのか意訳なのか創作なのか(?)わかりにくいので、本文の方が文脈もあり、英語学習者にとっては理解しやすいところはありますね。
ほんとうに今年は暑いですね。お大事になさってください。
2010年09月13日 07:10
この続きは、SIGN の意味(604)を見てください。